Self Reliance

自立支援事業

人生のビジョンを持つ人と持たない人について

先日ある企業で営業研修を行ってきました。
関東圏グループと地方グループの二つに分け、二回ずつ一日研修を行ってきました。

主に営業スキルの研修でしたが「ビジョンを持つように励ますことで仕事のモチベーションをアップする」ことが目的でした。
面白いことに関東圏グループより地方グループの方がモチベーションは高く、研修に前向きに積極的に取り組む姿勢も地方グループの方が高かったのでした。

私の「メンター・プログラム」では、関東圏にお住いの方から質問が多く来ます。
また関東圏の受講生の方は「具体的な回答」を求める傾向があります。

私はこれを「関東圏は刺激が強く、人生に対するストレスを地方より強く受けている」からだと考えています。

営業研修の場合も同様で、関東圏グループは、地方グループより代理店との摩擦・あつれきが強くあることが分かっています。
地方の営業担当は代理店とも仲良く助け合って仕事ができていますが、関東圏は代理店が自分達の負担を減らすために半ば高圧的に営業担当者に頼ってくるので、仕事量が多い傾向が強いとわかりました。

「メンター・プログラム」の受講生は関東圏の方が多いです。彼らは地方の方よりストレスが多いので、人生に対して深く考える機会が多いように感じます。地方の受講生のある方は「日々のんびりくらしているので、人生について深く考えないのだ」と仰っていました。

どちらがよいのか、と今回の営業研修中に考えました。

「地方に住んでいるとあまり大きなストレスがないので自己啓発なども必要ないのか」
「首都圏に住んでいると、競争も激しく自分の人生を仕事中心に考えなければならないので、このような自己啓発プログラムが必要になるのか」
このようなことを考える機会がありました。

そこでみなさんも聞いたことのある次のようなお話を思い出しました。

「ある商人がビジネスの機会を求めて船に乗って世界中を旅し、ある南洋の島へ到着しました。そこの男たちはろくに仕事もせず一日浜辺でごろごろと過ごしていました。当然収入もほとんどありません。商人は男たちを集めて『私とビジネスをしませんか?』と持ちかけました。『どんな得があるのかい?』と男たちが聞くと『お金もうけが出来、今より楽な生活ができます』と商人。『楽な生活ってどんな生活だい?』と男たちが聞きますと『ゆったりと暮らせるので一日あくせくせず、ビーチで寝たり、自由なことができる時間が持てたりますよ』そう商人が応えました。男たちは『それなら今の生活と同じだ』と答えました」

人はなんのためにこのような自己啓発プログラムを受講するのでしょう?
南洋の人々の寓話にあるように、既にのんびりとおだやかな生活をしている人にはこのような自己啓発プログラムは不要なのでしょうか。
営業研修の場では地方の営業担当の人々の方がのびのびと楽しそうに研修に参加していました。関東圏グループの人々は疲れ切っていました。

よく私たちは「自分はなんのために生きているのか?」と自問することがあります。これは古今東西の哲学者、文学者、芸術家たちの永遠の命題です。
地方の方にも悩みはあると思いますが、関東圏の人々はさらに悩みが多いのでしょう。
この命題に対して普遍的な答えを求めるとすれば「幸福になるため」と私は考えます。

その幸福がどのような形なのかを求めるために、私たちは本を読み、考え、悩みます。
地方の方といえどものんびりと幸せに暮らしている人ばかりではありませんし、関東圏の方でもみんなが深刻な悩みを抱えているわけではないでしょう。
要するに程度の差こそあれみんな「どうすれば今より幸せになれるだろうか」と考えているのだと思います。

ある人にこのように言われたことがあります。

「あなたのように深刻に考えなくても、人生は流れていくし、何とかなっていくものです。お金だって天下のまわりものと言いますから、何とか生きていく分は入ってくるからそんなに心配をあおらないで下さい。悩みなんてない方がよいのですから、悩みをことさらに増やすような話しをするのは止めた方がいいんじゃないですか」

彼のような考え方も理解できます。

「知らない方がよかった」というわけで、彼などは「心配のネタなど知らない方がよいんですよ」と言います。

しかしそれでも私は「どうすればもっと幸福になれるのか?」と考えるか考えないかで、その人の人生は大きく変わると思っています。
何も考えない人は、人生を惰性で毎日流していくだけの生活を送ります。そこには何の達成感も成長もありません。
毎日が同じことの繰り返しです。

朝決まった時間に起きる。ご飯は、食べたり食べなかったり。その日の都合や体調に合わせて変わりますが、基本行動はいつも同じ。
いつも同じ満員電車に乗って疲れて会社に着いたら、いつもと同じ仕事の内容。変わったこともありません。たまに取引先とトラブルがあったり、たまによいことがあったり、と特別なこともない毎日を過ごして帰宅。食事をしてテレビのバラエティー番組を見て笑って、お酒を飲んで寝る。

この間の研修の合間でこのような生活をしている九州の30才の独身男性の話を聞きました。
「若いころは帰ってから勉強もしたし本も読んでいた。でも今は何もしていません」とのことでした。
「でも不幸だと感じたことはないですよ」とも言っていました。

「成長もない」「何も進歩しない」人生を送っ人は老人になった時、どんな気持ちがするのでしょうか?その時にもやはり「不幸じゃなかった。良い人生だった」と思うのでしょうか?
「それはその人の価値観だから」という人もいますが、私はそれではやはり「つまらない人生」だと思うのです。
せっかく命を得てこの世に来ているのに何も達成できない、生きた証を残せない人生ではあまりにもむなしい人生ではないでしょうか?

人の人生はやはり「幸せになるため」にあるのだと思います。

私はそのように思うのでこのような自己啓発プログラムを世の中に広めようとしているのだ、と改めて思ったのでした。