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2021.06.25コーチングスキル関連

営業スキルを短期間で伸ばす最も効果的な営業同行の本当の方法(商談前打ち合わせ)

営業スキルを伸ばす為の営業同行を伝えるおすすめの本

殆どの日本企業では「営業同行」が行われていません。
代わりにロールプレイングを中心に営業研修は行われています。
しかしロールプレイングは「社内の出来レース」「シナリオ付きで実践的でない」「やらせで練習にならない」「遊び半分」などの印象を持っている営業マンもいて、真剣味に欠けるという問題もあります。

それに対して営業同行は何しろ「リアル商談」「実践の場」「真剣勝負・待ったなし・やり直し無し」「相手を怒らせたら即退場」という現場です。上司に同行される営業マンも緊張してしまいます。

上司も「部下の手前恥ずかしい事は出来ない」「失敗したらメンツ丸つぶれと言うリスクと緊張感で、苦手意識を持っている人も多いようです。

私が研修をしてきた各企業で尋ねると、営業同行が行われない実際の理由はこれだけではありません。

なぜ日本企業では営業同行が行われていないのでしょうか?

第一の理由は、「時間が無い

「営業マンも上司も苦手」な理由は前述の「お互い失敗したら気まずい事になる・叱られる」等のメンタルな理由がよく聞かれます。
しかし実際に一番多い理由がこの「時間が無い」です。

どの企業でも上司と言えど「プレイング・マネージャー」つまり「自身も売り上げ目標を持ちながら部下を持つ管理職」ですから、第一の責任は「売り上げ目標の達成」です。
つまり、部下を訓練する時間を取るより「自分で稼いできた方が手っ取り早い」というところです。

実際営業マネージャーの多くは営業成績が良いので、昇進しています。
自分の腕に覚えがありますので、部下に時間を取られたくないのです。もたもたしているより「俺がお前の代わりに売ってくるよ」と、どんどん身代わりを申し出て、売り上げてくる上司のいかに多い事でしょう。

部下にしても上司が「自分の売り上げにつけてくれる」と言いますから、楽して目標達成できて、大助かりです。月末にはみんなでお祝いです。お互い、特に罪悪感もありません。

第二の理由は、「営業同行で何をしたらよいか分からない」

研修で役員・部長・マネージャーに「営業同行で何をしますか?」と聞くと、ほぼ誰も答えられません。
彼らは営業同行をする時もあります。その時何をしているのでしょうか?
彼らの「営業同行」に「私が同行する」と、だいたい次のようなことをみなさんしています。
何よりも彼らは普段は営業同行をしていないので、だいたいは私に観察されながら右往左往して部下と相談しながら進めています。

日本企業で行われている一般的な営業同行

私が「営業同行にお付き合いさせてください」とお願いすると、次のような手順で事は進んでいきます。

・池田宛に「集合場所・時間のメール」が前日までに届く。
・ 商談アポの15分前。 訪問先企業の玄関付近で集合。「営業マネージャー、営業マン」と初顔合わせ。
・今日の予定を確認。誰に会うか、何をするか、取引概略など打ち合わせ。
・商談開始。
・商談終わり。
・次の商談先へ移動。移動しながら先ほどの商談のレビューと対策。
・夕方までアポの数だけこれを繰り返し。

いかがでしょうか?みなさんもだいたいこのような感じではないでしょうか?
ここには「アメリカの営業会社では絶対に行ってはいけない事」がいくつもあります。
それでは実際にアメリカの営業マネージャー達が行っている「営業同行」についてご紹介します。

アメリカの営業マネージャーが行っている営業同行

・前日にオフィスに集合。「商談前打ち合わせ(Pre-Call)」の実施。
・5つのポイントについて情報の確認と共有。(約30分)
  ①訪問先情報の共有: 誰と会うのか。過去・現在の取引状況。過去の問題点。担当者情報。
  ②目的
  ③使用する資料の確認
  ④ゴールの確認
  ⑤上司である私に何をして欲しいか、を営業マンに確認
・当日は現地集合。
・商談
・「終了後打ち合わせ(Post-Call)」(約1時間~2時間:状況による)

いかがでしょう。一般的な営業同行とどこが違うかお分かりになりましたか?ひとつずつ説明していきましょう。

「商談前打ち合わせ(Pre-Call)」

「Pre-」とは「事前の」という意味。「Call」とは「商談アポイントメント」の事です。つまり「Pre-Call」は文字通り「商談前」の事で、その打ち合わせをすることを「Pre-Callをしよう」と営業では言います。

Pre-Callは、は「当日現地集合」ではなく、絶対に前日もしくは当日のオフィスを出る1時間前には行います。理由は3番目に出てきますが、順番に説明します。

①の「訪問先情報の共有:過去・現在の取引状況。過去のトラブル。担当者情報」

この打ち合わせは、結構時間がかかります。
特に「取引状況」や「過去のトラブル」は商談相手は「上司も理解しているもの」と思って営業マンと会いますので「知らない」では済まされません。

ある事例で「上司の方が来られたと言う事は、今日はあの件でのお詫びでしょうか?」と、いきなり切りだされた事があります。
営業マンはトラブルを上司に報告しておらず、しかも「近々上司を連れてご説明に上がります」と先方に約束していたのでした。

こうなるといくら優秀な上司でも準備不足では完全にお手上げです。相手のペースでやられ放題です。
こうならないように、同行する上司は自分の身を守るためにも「絶対に訪問先の情報」は事前に徹底的に確認しておきましょう。

② 本日の商談の目的の確認

「訪問の目的」は「何をするのか?」の確認です。

営業マンは「何をするか」は当然分かっていますが、上司にはわかりませんのでちゃんと打ち合わせが必要です。
営業同行は「訓練」だけでなく「上司の力で商談を進める」事もできるのです。上司の力を効果的に活かすために、よく打ち合わせをしておきましょう。

「新規商材の売り込み」「全くの初回訪問」「前回質問された事の説明」「商材の実演(デモ)」など色々な目的があります。
上司にきちんと目的を確認しておいてもらい、十分サポートしてもらえるように仕込む必要があります。

ある商談で「新商品の紹介」とだけ打ち合わせをしていたのですが、「何をどの順番で紹介するか」決めていなかったので、途中から上司が他の顧客で自分が売りこみに成功した商材を紹介し始めました。
しかし営業マンは「この商材はこの会社の担当者は嫌っている」事を知っていました。

この商談は「上司のおかげで失敗した」と部下は非常に憤慨しました。上司は「事前に話しておかないのが悪い」と謝りません。このような悲劇も役割分担を打ち合わせておけば防ぐことができます。

③ 使用する資料の確認

商談で見せる資料は、事前確認が必要です。

ある会社で「社外㊙資料」が会議でシェアされました。
ところが若い営業マンが商談でそれを使って説明し始めたのです。悪いことにその情報は、相手企業のライバル企業の情報が社名入りで出ていたのでした。先方は非常に興味を持ちました。当然ですね、ライバル企業の機密情報だったからです。
営業マンは自分の商談している会社が、自社のお得意さんのライバル企業である事を知っていましたが、まさか㊙資料がお得意さんの機密資料と認識していなかったのです。

大変な事になりました。同社は「機密を漏らした」事で大きな損失をもたらしたと「取引停止とペナルティ」を課せられました。

上司が事前に資料を確認していれば「それは君、社外㊙と言われているだろう!」と注意出来たはずです。商談の場で出されてからでは手遅れです。

また契約書の見積もり額が間違っていた例もありました。これは訪問先企業に入る前に確認できたので提出しないで済みましたが、その日は何もできず「今見積りし直しています」とごまかすしかできませんでした。

上司はこのように訪問前に「オフィスで」資料を確認することで、「修正・訂正・指導」をする事が出来ます。

このために「商談前打ち合わせは必ず、前日もしくはオフィスを出る1時間前に行う」というルールがアメリカにはあるのです。1時間あれば修正できますからね。

④ 商談の「ゴール」の確認

営業研修で皆さんが混乱するのは「②目的」と「④ゴール」の違いです。私からも質問しますが、ほとんど答えられません。

「目的=何をするか」で「ゴール=成果物」です。

つまりゴールとは「目的を達成して最終的に何を得るのか?」です。

たとえば「新規商材の売り込みをデモ器で行う」が目的なら、ゴールは「新規採用の発注書にサインをもらう」ですね。

ところが非常によく見られるのが「新規商材の売り込みプレゼンをデモ器を用いてがんばりました。以上」という商談です。
本人は「初めての新規商材プレゼン」で覚えたての知識を披露し、デモ器も使いこなしました、がんばりました」で満足してしまい、相手の反応は確認しましたが、燃え尽きてクロージングまでたどり着かなかった、と言うケースです。

「ここまでがんばったのだから、次回もう一度確認に来よう」と自分を甘やかしてしまう営業マンがとても多いのですね。
力尽きたと言うのでしょうか。この事例、とても多くて勿体ないです。目的だけ果たせばそれで満足してしまう営業マンです。皆さんの部下にも多いのではないでしょうか?

⑤ 上司である私に何をして欲しいか、を営業マンに確認

このセリフを日本企業の上司から聞いた事はあまりありません。
上司同行は部下にとってもチャンスです。訓練だけでなく、上司の力を借りて売り上げを確定出来る可能性があるからです。

アメリカのボスはDirector(ディレクター:部長~役員待遇)で、結構力をもっていました。
同行前の打ち合わせではいつも自分の名刺を部下に見せ「さあ、今日は私のこの肩書をどう利用したい?」と聞いてくれました。
格好いいですよね。いつかこのセリフを言えるようになりたい、と思ったものです。

商談相手にすれば「課長」「マネージャー」の肩書の人が来れば、期待しますね。
「何かよいお話しかな?」「こちらに利益になるお話し?」とわくわくするかもしれません。
あるいは「値上げかな?」とか身構えるかもしれません。
「この営業マンはDirectorを連れてくる力をもっているんだな」
「我が社を大切におもってくれているのかな?」
と感じるかもしれません。
相手がどのような反応をするかも考えながら、上司と営業マンは「どのように上司を活用するか」考えるべきです。

その為に上司から部下に聞くべき事は「私に何をして欲しい?」です。

部下にとっても「この営業同行が特別な機会なんだ」と認識する良い場になります。そして「上司としての私の肩書き」を上司自身もきちんと意識するよい機会となります。

このように営業同行の「同行前打ち合わせ」はアメリカでは部下の成長と成果を上げるために徹底的に行われています。
どうでしょうか?使えそうですか?

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